Gene Targeting

はじめに

ES細胞を用いて、Gene Targetingによる遺伝子改変マウスを作製します。
ご依頼は、”ベクターの構築から”と、”相同組み換え体ES細胞の単離から”の、2通りからお選び頂けます。

遺伝子改変マウスの作製

A.ベクターの構築から

ターゲティングベクターの構築からキメラマウス作出までの技術支援を行います。F1マウスのgenotypingの条件検討、サザン解析での確認、以後のgenotypingは、依頼者に行っていただきます。なお、サザン解析は必須です。またマウスgenotypingのサザン解析はお引き受けしておりませんので、ご了承ください。
ターゲティングベクター構築をご自身で行う場合は、「ノックアウトマウスの作製(相同組換え体の単離から)」でお申し込み下さい。

B.相同組換え体ES細胞の単離から

生体モデル開発チームの作製法(プロトコール)に従って、依頼者にベクターの作製、相同組換え体ES細胞のPCRによるスクリーニングとサザン解析を行っていただきます。生体モデル開発チームは、ES細胞の培養およびキメラマウス作出を行います。

  • キメラマウスの搬出時に重要ですので、RIKEN BDRの微生物学的品質規格について、必ずご確認下さい。

  • 作製開始からキメラマウス誕生まで、およそ8ヶ月間を要します(遺伝子のlocusによって左右される場合もあります)。

  • 使用するES細胞は、C57BL/6N とCBAのF1ハイブリッドである【TT2】、または、C57BL/6N 由来の【HK3i (C57BL/6N)】です。

  • Constructionに関しては、Conventional knockout、Conditional knockout、Knockin、Point mutationをお引き受けしていますが、遺伝子改変のストラテジーは打ち合わせによって決定致します。特殊な変異については、申し込み前にご相談ください。コンストラクションに関して双方合意した後にベクター構築を開始しますが、予期出来ず生じるトラブルについては、双方の責任で対処することご了承ください。

 

作製方法

Gene Targetingによる遺伝子改変マウスの作製は、以下の方法があります。

1)Conventional KO:ExonsをNeoにより置き換えることで欠損させる方法
Conventional KO イメージ画像

loxPで挟まれたNeoを置き換えることにより、ゲノム領域をおよそ最大で3kb程度削ることができます。Neoは標的遺伝子の発現に影響することがありますので、Creマウスにより取り除き、解析することをお勧めします。

2)Conditional KO:ExonsをloxPで挟み、Creにより取り除く方法
Conditional KO イメージ画像

loxPで挟むことができる領域は、1kbp程度です。それ以上になると、Neoから離れたloxPが挿入される確率が低下する傾向があります。NeoはFRTで挟まれています。Neoにより標的遺伝子の発現が影響を受けることがありますので、Flpマウスにより取り除き、解析することをお勧めします。

3)Knock-in:GFP, Creなどを挿入して発現させる方法
Knock-in イメージ画像

Neoは標的遺伝子の発現に影響することがありますので、Creマウスにより取り除き、解析することをお勧めします。

4)Point Mutation:塩基置換を挿入する方法
Point Mutation イメージ画像

点変異の位置はNeoから離れると挿入される効率が低下する傾向があります。500bp程度が目安となります。Neoは標的遺伝子の発現に影響することがありますので、Creマウスにより取り除き、解析することをお勧めします。

共同開発の流れ

A.ベクターの構築から

  • 1
    依頼者お申し込み
  • 2
    依頼者、生体モデル開発チーム同意書締結
  • cDNA情報を、変異マウス作製管理システム(以下;CDB Web)のdetailに登録してください。CDB Web上のメッセージ機能を使用し、コンストラクションについてディスカッションを行います。

    コンストラクションに応じて、必要なマウス(loxP/Neo/loxPを使った場合はCreマウス、FRT/Neo/FRTを使ったconditional KOマウスはFlpマウスなど)を、事前に入手していただく必要があります。

    例1:ユビキタスにCreを発現するマウス:EIIaCre (https://www.jax.org/strain/003724)
    例2:ユビキタスにFpplaseを発現するマウス:ACT FLPe (https://www.jax.org/strain/003800)
    *これらのトランスジェニックマウスは♀をご使用下さい。

  • 4
    生体モデル開発チームベクター構築
  • ターゲティングベクターが完成すると、相同組み換え体ES細胞のスクリーニングを行います(PCR、その後サザン解析を実施)。
    1回目のスクリーニングはlong PCRを用いて、96~192個のNeo耐性コロニーに対して行います。2回目のスクリーニングはlong PCRポジティブES細胞について、サザン解析を行います。

    ES細胞は、TT2(CBAxC57BL/6)とHK3i(C57BL/6)の2種類から選択できます。

    TT2
    A novel ES cell line, TT2, with high germline-differentiating potency. Yagi T., Tokunaga T., Furuta, Y., Nada S., Yoshida M., Tsukada T., Saga Y., Takeda N., Ikawa Y. and Aizawa S. Anal Biochem. 1993 Oct;214(1):70-6

    HK3i
    Three Inhibitors of FGF Receptor, ERK and GSK3 Establishes Germline-Competent Embryonic Stem Cells of C57BL/6N Mouse Strain with High Efficiency and Stability. Kiyonari H, Kaneko M, Abe S and Aizawa S. Genesis. 2010 May;48(5):317-27

  • 相同組み換え体ES細胞を8細胞期胚へinjectionして、キメラマウスを作出します。
    キメラマウスの寄与率は、毛色により判別することができます。
    TT2 ES細胞を用いた場合は、70%~100%近く寄与します。毛色については「 TT2 細胞とマウスの毛色の関係(PDF)」をご参照ください。
    HK3iを用いた場合は、ほぼ100%黒毛のマウスが得られることがあります。

  • RIKEN BDRの微生物学的品質規格について、必ずご確認下さい。

    キメラマウスを送付する時期に、genotyping PCRのポジティブコントロールとして
    Targeting Vectorとサザン解析プローブの鋳型、ゲノム配列などが示してある資料を送付致します。 それをもとにgenotyping PCRの条件を決定し、F1マウスのgenotypingを行って下さい。 詳しくは「条件検討のプロトコールについて(PDF)」をご覧ください。
    Conditional KOの場合はloxP配列が挿入されていないことがありますので、loxP配列の挿入が確認できるGenotyping PCRも行ってください。 詳しくは「PCRについて(PDF)」をご覧ください。
    キメラマウス引き渡し通知から実際のキメラマウス搬送までは、1ヶ月以内とします。

    生体モデル開発チームからのマウス搬出に際し、搬入先の『承認済み遺伝子組み換え実験計画書の写し(通知書及び実験計画書)』をご提出いただく必要があります。PDFをメールでお送りいただくか、FAX(078-306-3337)して下さい。
    上記に該当する書類がない場合、および生体モデル開発チームが提出すべき書類がある場合は、お早めにご連絡ください。
    運搬費用は作製費用には含まれておりませんので、ご注意下さい。

  • キメラマウスを野生型C57BL/6 (若しくはCBA)と交配し、得られたF1マウスに対して、速やかにgenotypingを行い、データを生体モデル開発チームにご提出ください。

    Gene Targetingで作製した場合、サザン解析はPCRの正確性を確認するためのものであり、一度確認できれば以後はPCRで構いません。

  • 樹立したラインは生体モデル開発チームで系統保存しますので、1ラインあたりオス2~3匹(12~40週齢)を、系統保存用マウスとして生体モデル開発チームにご提供下さい。
    凍結保存用のマウスが用意でき次第、CDB Webの掲示板(またはmutant.bdr(at)riken.jp)にご連絡下さい。

  • 第一報の論文発表に関し、論文投稿前に必ずご連絡下さい。生体モデル開発チームから共著者として加えて頂く者をご連絡いたします。
    また、Materials and Methods には、指定URLとAccession No.を記載していただくことを求めます。
    Accession No. は、相同組み換えES細胞単離時にご連絡します。

  • 凍結保存胚の一部を、理化学研究所バイオリソース研究センターへ寄託します。寄託手続きやマウス(凍結保存胚)の搬出は、生体モデル開発チームが行います。
    寄託に際しては、(1)分与に際しては甲の合意を得ること、(2)論文発表に際し当該変異マウスの由来に関し第一報を引用しAcc. No.を記載すること、(3)発表論文を甲、乙に連絡することを分与条件とします。この際、共同開発依頼者(甲)は、分与依頼者との協議により、共同研究とする、研究目的を限定する、その他の条件を指定することができますし、分与を拒否することもできます。協議が成立しましたら、生体モデル開発チーム(乙)にご連絡下さい。その条件の下での変異マウス分与をBRCに依頼します。

B.相同組み換え体ES細胞の単離から

  • 1
    依頼者お申し込み
  • 2
    依頼者、生体モデル開発チーム同意書締結
  • cDNA情報を、変異マウス作製管理システム(以下;CDB Web)のdetailに登録してください。CDB Web上のメッセージ機能を使用し、コンストラクションについてディスカッションを行います。

    コンストラクションに応じて、必要なマウス(loxP/Neo/loxPを使った場合はCreマウス、FRT/Neo/FRTを使ったconditional KOマウスはFlpマウスなど)を、事前に入手していただく必要があります。

    例1:ユビキタスにCreを発現するマウス:EIIaCre (https://www.jax.org/strain/003724)
    例2:ユビキタスにFpplaseを発現するマウス:ACT FLPe (https://www.jax.org/strain/003800)
    *これらのトランスジェニックマウスは♀をご使用下さい。
  • ターゲティングベクターが完成すると、相同組み換え体ES細胞のスクリーニングを行います(PCR、その後サザン解析を実施)。
    1回目のスクリーニングはlong PCRを用いて、96~192個のNeo耐性コロニーに対して行います。2回目のスクリーニングはlong PCRポジティブES細胞について、サザン解析を行います。

    ES細胞は、TT2(CBAxC57BL/6)とHK3i(C57BL/6)の2種類から選択できます。

    TT2
    A novel ES cell line, TT2, with high germline-differentiating potency. Yagi T., Tokunaga T., Furuta, Y., Nada S., Yoshida M., Tsukada T., Saga Y., Takeda N., Ikawa Y. and Aizawa S. Anal Biochem. 1993 Oct;214(1):70-6

    HK3i
    Three Inhibitors of FGF Receptor, ERK and GSK3 Establishes Germline-Competent Embryonic Stem Cells of C57BL/6N Mouse Strain with High Efficiency and Stability. Kiyonari H, Kaneko M, Abe S and Aizawa S. Genesis. 2010 May;48(5):317-27

  • 相同組み換え体ES細胞を8細胞期胚へinjectionして、キメラマウスを作出します。
    キメラマウスの寄与率は、毛色により判別することができます。
    TT2 ES細胞を用いた場合は、70%~100%近く寄与します。 毛色については「TT2 細胞とマウスの毛色の関係(PDF)」をご参照ください。
    HK3iを用いた場合は、ほぼ100%黒毛のマウスが得られることがあります。

  • RIKEN BDRの微生物学的品質規格について、必ずご確認下さい。

    キメラマウスを送付する時期に、genotyping PCRのポジティブコントロールとして
    Targeting Vectorとサザン解析プローブの鋳型、ゲノム配列などが示してある資料を送付致します。 それをもとにgenotyping PCRの条件を決定し、F1マウスのgenotypingを行って下さい。 詳しくは「条件検討のプロトコールについて(PDF)」をご覧ください。
    Conditional KOの場合はloxP配列が挿入されていないことがありますので、loxP配列の挿入が確認できるGenotyping PCRも行ってください。 詳しくは「PCRについて(PDF)」をご覧ください。
    キメラマウス引き渡し通知から実際のキメラマウス搬送までは、1ヶ月以内とします。

    生体モデル開発チームからのマウス搬出に際し、搬入先の『承認済み遺伝子組み換え実験計画書の写し(通知書及び実験計画書)』をご提出いただく必要があります。PDFをメールでお送りいただくか、FAX(078-306-3337)して下さい。
    上記に該当する書類がない場合、および生体モデル開発チームが提出すべき書類がある場合は、お早めにご連絡ください。
    運搬費用は作製費用には含まれておりませんので、ご注意下さい。

  • キメラマウスを野生型C57BL/6 (若しくはCBA)と交配し、得られたF1マウスに対して、速やかにgenotypingを行い、データを生体モデル開発チームにご提出ください。

    Gene Targetingで作製した場合、サザン解析はPCRの正確性を確認するためのものであり、一度確認できれば以後はPCRで構いません。

  • 樹立したラインは生体モデル開発チームで系統保存しますので、1ラインあたりオス2~3匹(12~40週齢)を、系統保存用マウスとして生体モデル開発チームにご提供下さい。
    凍結保存用のマウスが用意でき次第、CDB Webの掲示板(またはmutant.bdr(at)riken.jp)にご連絡下さい。

  • 第一報の論文発表に関し、論文投稿前に必ずご連絡下さい。生体モデル開発チームから共著者として加えて頂く者をご連絡いたします。
    また、Materials and Methods には、指定URLとAccession No.を記載していただくことを求めます。
    Accession No. は、相同組み換えES細胞単離時にご連絡します。

  • 凍結保存胚の一部を、理化学研究所バイオリソース研究センターへ寄託します。寄託手続きやマウス(凍結保存胚)の搬出は、生体モデル開発チームが行います。
    寄託に際しては、(1)分与に際しては甲の合意を得ること、(2)論文発表に際し当該変異マウスの由来に関し第一報を引用しAcc. No.を記載すること、(3)発表論文を甲、乙に連絡することを分与条件とします。この際、共同開発依頼者(甲)は、分与依頼者との協議により、共同研究とする、研究目的を限定する、その他の条件を指定することができますし、分与を拒否することもできます。協議が成立しましたら、生体モデル開発チーム(乙)にご連絡下さい。その条件の下での変異マウス分与をBRCに依頼します。

依頼方法

mutant.bdr(at)riken.jpに連絡し、下記の書類を案内に従って送付して下さい。
ご依頼は、”ベクターの構築から”と、”相同組み換え体ES細胞の単離から”の2通りからお選び頂けます。
書類受領後2週間以内に、署名・捺印した共同開発同意書のPDFをメールで返送致します。 初めて申し込まれる研究室には、変異マウス作製管理システム(以下;CDB Web)にログインするためのID番号と初期パスワードを発行します。
同意書を受領後、ID番号と初期パスワードでCDB Webにログインして下さい。
※以降の連絡事項は原則としてCDB Web内の掲示板にご記入下さい。

RIKEN BDRの微生物学的品質規格について、必ずご確認下さい。

必要書類

  1. マウス作製申込書
  2. 共同開発同意書
    同意書に遺伝子名を記入し、署名・捺印の上、PDFをメールでお送り下さい。
    同意書のご署名は所属長(=教授、またはこれに準じる方)に限ります。