Genome Editing

はじめに

ゲノム編集技術を用いて、遺伝子改変マウスを作製します。
注入用溶液を200~400個のマウス前核期受精卵にElectroporationまたは Microinjectionにより導入し、仮親マウスの卵管へ移植します。通常30~80匹のマウスが誕生します(10~30%)。
CRISPR/Cas9 を用いた手法では、ES細胞を介した gene targeting に比べ、作製期間が短く費用も安価とはなりますが、一方でgRNA標的配列に類似のゲノム領域を切断するoff-target effectによる予期せぬ変異が起こる可能性が知られています。 使用するgRNAは、標的領域以外の遺伝子領域(exon)への相同性が低い配列を選別しますが、幾つかのoff-target候補サイトをシークエンスで確認するなどの必要が生じる可能性があることをご留意下さい。現在のところ、生体モデル開発チームではoff-target候補サイトの解析については対応いたしかねますが、off-target 候補サイトの情報を提示いたします。また目的の領域にgRNA配列が設定できない場合は、CRISPR/Cas9では対応できませんのでご了承ください。

  • ご依頼は、”gRNAのデザインから”と、”Electroporation/Microinjectionから”の、2通りからお選び頂けます。

遺伝子改変マウスの作製

A. gRNAのデザインから

gRNAのデザインから調整を、生体モデル開発チームが行います(オプションでファウンダー(F0)マウスのgenotypingも行います)。gRNAのデザインからファウンダー(F0)マウス誕生まで2ヶ月程度です。

B. Electroporation/Microinjectionから

gRNAの調整などは依頼者に行っていただきます。gRNAの受け取りからファウンダー(F0)マウス誕生まで1ヶ月程度です。

  • ファウンダー(F0)マウスの搬出時に重要ですので、RIKEN BDRの微生物学的品質規格について、必ずご確認下さい。

  • 使用する受精卵の系統は、下記の通りです。
    Inbred:C57BL/6N
    上記以外の系統を希望される場合は、事前にご相談下さい。

 

作製方法

ゲノム編集技術による遺伝子改変マウスの作製は、以下の方法があります。

1)Indel(Deletion)によるノックアウト(KO)マウスの作製
Indel(Deletion)によるマウスの作製イメージ

一種類のgRNAによりinserion/deletion(Indel)を引き起こします。どのようにIndelが起こるか予測することができませんので、シークエンスによりゲノム配列の確認を行う必要があります。

変異デザイン:
シークエンスによる選別が困難です。そこでssODNにより制限酵素サイトや終始コドンを挿入することで、変異をデザインすることができます(下記のpoint mutationと同じ)(Ref.1)。これによりファウンダー(F0)マウスの選別やgenotypingが容易になります。

2)Large Deletionによるノックアウト(KO)マウスの作製
Large Deletionによるマウスの作製イメージ

広範囲のゲノム領域をdeletionしたい場合は、2種類のgRNAを使用します。どのようにIndelが起こるかコントロールすることができませんので、シークエンスによりゲノム配列の確認を行う必要があります。

変異デザイン: 広範囲のゲノムをdeletionする場合もssODNを用いることで、つなぎ目の変異をデザインすることができます(Ref. 2)。

References

  • Rapid generation of mouse models with defined point mutations by the CRISPR/Cas9 system.
    Inui M, Miyado M, Igarashi M, Tamano M, Kubo A, Yamashita S, Asahara H, Fukami M, Takada S.
    Sci Rep.2014 Jun 23;4:5396. doi: 10.1038/srep05396.
  • Chromosome engineering in zygotes with CRISPR/Cas9.
    Boroviak K, Doe B, Banerjee R, Yang F, Bradley A.
    Genesis.2016 Feb;54(2):78-85. doi: 10.1002/dvg.22915. Epub 2016 Jan 25.
3)コンディショナル ノックアウト(conditional knockout: cKO)マウスの作製
コンディショナルノックアウトマウスの作製イメージ1

One-Step:
1kp以上の場合、2種類のgRNAsと2種類のssODNsを用いてコンディショナル ノックアウト(conditional knockout: cKO)マウスを作製します。

コンディショナルノックアウトマウスの作製イメージ2コンディショナルノックアウトマウスの作製イメージ3

Two-Steps:
5’側と3’側を一つずつ挿入する方法。最初のloxPが挿入されたファウンダー(F0)マウスのオスを用いて野生型マウスとIVFし、凍結胚を作製します。そして残りのloxPをその卵に導入することで、コンディショナル ノックアウト(conditional knockout: cKO)マウスを作製します。
*IVFと追加のMicroinjectionには追加費用が必要になります。

ssODNでコンディショナル ノックアウト(conditional knockout: cKO)マウスを作製する場合に得られる可能性のあるアレル:

コンディショナルノックアウトマウスの作製イメージ4

loxPで挟む領域(Flox)が、10kb以上(long PCRやサザン解析による確認が不可能な長さ)の場合は、Flox候補のファウンダー(F0)マウスを野生型マウスと交配して得られたF1マウスのアレルを解析しFloxアレルを確認する必要があります。

コンディショナルノックアウトマウスの作製イメージ5

One-Step:
1kb以下の場合は、2種類のgRNAと2つのloxPを含むDonor plasmidを用いてConditional KO(cKO)マウスを作製することができます。

References

  • Gene cassette knock-in in mammalian cells and zygotes by enhanced MMEJ.
    Aida T., et al.
    BMC Genomics2016 Nov 28;17(1):979.
4)点変異マウスの作製
点変異マウスの作製イメージ

一種類のgRNAとssODNにより、点変異を挿入し作製します(Ref. 1)。目的の領域にgRNA配列がない場合は、この方法では対応できません。他の方法を検討することになります。

References

  • Rapid generation of mouse models with defined point mutations by the CRISPR/Cas9 system.
    Inui M, Miyado M, Igarashi M, Tamano M, Kubo A, Yamashita S, Asahara H, Fukami M, Takada S.
    Sci Rep.2014 Jun 23;4:5396. doi: 10.1038/srep05396.
5)ノックインマウス(KI)の作製
PITCh systemによるノックインマウスの作製イメージ

PITCh (Precise Integration into target Chromosome) system:

MMEJを利用したPITCh systemによる方法でノックイン(KI)マウスを作製します。

Homology recombinationによるノックインマウスの作製イメージ

Homology recombination:
Homology recombinationによる方法でノックイン(KI)マウスを作製します。

References

  • Pronuclear Microinjection during S-Phase Increases the Efficiency of CRISPR-Cas9-Assisted Knockin of Large DNA Donors in Mouse Zygotes.
    Abe, T., et al.
    2020 Cell Reports 31, 107653
  • MMEJ-assisted gene knock-in using TALENs and CRISPR-Cas9 with the PITCh systems.
    Sakuma, T., et al.
    2015 Nat Protoc. 2016 Jan;11(1):118-33.

共同開発の流れ

A. gRNAのデザインから

  • 1
    依頼者お申し込み
  • 2
    依頼者、生体モデル開発チーム同意書締結
  • 標的遺伝子座のゲノム情報を、CDB Webのdetailへ登録してください。
    CDB Webにてコンストラクションについてディスカッションを開始します

  • 4
    生体モデル開発チームgRNA / donor vectorの作製
  • 5
    生体モデル開発チーム受精卵への導入
  • RIKEN BDRの微生物学的品質規格について、必ずご確認下さい。

    ファウンダー(F0)マウスは離乳後(4週齢)に搬出致します。
    ファウンダー(F0)マウス引き渡し通知から実際のマウス搬送までは、1ヶ月以内とします。

    追加のinjection

    Indelマウスが得られなかった場合(Cas9による切断がまったく起きなかったことが予測される場合)は、ご要望に応じて再度インジェクションを行います

    生体モデル開発チームからマウスを搬出する際、搬出先において使用計画等があること及ひび適切な拡散防止措置等が執られることを確認しています。貴機関の動物実験計画、遺伝子組換え実験計画に、共同開発で作製するマウスの情報が含まれていない場合は、実験計画への追加等、ご対応をお願いいたします。なお、生体モデル開発チームから搬出のご連絡後、1ヶ月以内にお受け取り頂けない場合は、飼育スペースに限りがありますので、外部の飼育施設に搬出します。飼育費用等は別途かかりますので、遅滞なくご対応いただけますよう、お願い申し上げます。
    上記に該当する書類がない場合、および生体モデル開発チームが提出すべき書類がある場合は、お早めにご連絡ください。

    運搬費用は作製費用には含まれておりませんので、ご注意下さい。

  • ファウンダー(F0)マウスを野生型マウスと交配し、得られたF1マウスに対して、速やかにgenotypingを行い、データを生体モデル開発チームにご提出ください。

    CRISPR/Cas9により作製したファウンダー(F0)マウスは、それぞれ独立したサブラインとして維持してください。off-target effectsによるmutationsやdonor vectorのrandom integrationsが起こる可能性がありますので、最低2系統はサブラインとして維持してください。
    また、解析と並行してバッククロスすることをお勧めしております。

  • 樹立したラインは生体モデル開発チームで系統保存しますので、1ラインあたりオス2~3匹(12~40週齢)を、系統保存用マウスとして生体モデル開発チームにご提供下さい。
    凍結保存用のマウスが用意でき次第、CDB Webの掲示板(またはmutant.bdr(at)riken.jp)にご連絡下さい。

  • 第一報の論文発表に関し、論文投稿前に必ずご連絡下さい。生体モデル開発チームから共著者として加えて頂く者をご連絡いたします。
    また、Materials and Methods には、指定URLとAccession No.を記載していただくことを求めます。

  • 凍結保存胚の一部を、RIKEN BRCへ寄託します。寄託手続きやマウス(凍結保存胚)の搬出は、生体モデル開発チームが行います。

    寄託に際しては、(1)分与に際しては甲の合意を得ること、(2)論文発表に際し当該変異マウスの由来に関し第一報を引用しAcc. No.を記載すること、(3)発表論文を甲、乙に連絡することを分与条件とします。この際、共同開発依頼者(甲)は、分与依頼者との協議により、共同研究とする、研究目的を限定する、その他の条件を指定することができますし、分与を拒否することもできます。協議が成立しましたら、生体モデル開発チーム(乙)にご連絡下さい。その条件の下でマウスを分与するようRIKEN BRCに依頼します。

B. Microinjectionから

  • 1
    依頼者お申し込み
  • 2
    依頼者、生体モデル開発チーム同意書締結
  • 標的遺伝子座のゲノム情報を、CDB Webのdetailへ登録してください。
    CDB Webにてコンストラクションについてディスカッションを開始します

  • 4
    生体モデル開発チーム受精卵への導入
  • RIKEN BDRの微生物学的品質規格について、必ずご確認下さい。

    ファウンダー(F0)マウスは離乳後(4週齢)に搬出致します。
    ファウンダー(F0)マウス引き渡し通知から実際のマウス搬送までは、1ヶ月以内とします。

    追加のinjection

    Indelマウスが得られなかった場合(Cas9による切断がまったく起きなかったことが予測される場合)は、ご要望に応じて再度インジェクションを行います

    生体モデル開発チームからマウスを搬出する際、搬出先において使用計画等があること及ひび適切な拡散防止措置等が執られることを確認しています。貴機関の動物実験計画、遺伝子組換え実験計画に、共同開発で作製するマウスの情報が含まれていない場合は、実験計画への追加等、ご対応をお願いいたします。なお、生体モデル開発チームから搬出のご連絡後、1ヶ月以内にお受け取り頂けない場合は、飼育スペースに限りがありますので、外部の飼育施設に搬出します。飼育費用等は別途かかりますので、遅滞なくご対応いただけますよう、お願い申し上げます。
    上記に該当する書類がない場合、および生体モデル開発チームが提出すべき書類がある場合は、お早めにご連絡ください。

    運搬費用は作製費用には含まれておりませんので、ご注意下さい。

  • ファウンダー(F0)マウスを野生型マウスと交配し、得られたF1マウスに対して、速やかにgenotypingを行い、データを生体モデル開発チームにご提出ください。

    CRISPR/Cas9により作製したファウンダー(F0)マウスは、それぞれ独立したサブラインとして維持してください。off-target effectsによるmutationsやdonor vectorのrandom integrationsが起こる可能性がありますので、最低2系統はサブラインとして維持してください。
    また、解析と並行してバッククロスすることをお勧めしております。

  • 樹立したラインは生体モデル開発チームで系統保存しますので、1ラインあたりオス2~3匹(12~40週齢)を、系統保存用マウスとして生体モデル開発チームにご提供下さい。
    凍結保存用のマウスが用意でき次第、CDB Webの掲示板(またはmutant.bdr(at)riken.jp)にご連絡下さい。

  • 第一報の論文発表に関し、論文投稿前に必ずご連絡下さい。生体モデル開発チームから共著者として加えて頂く者をご連絡いたします。
    また、Materials and Methods には、指定URLとAccession No.を記載していただくことを求めます。

  • 凍結保存胚の一部を、RIKEN BRCへ寄託します。寄託手続きやマウス(凍結保存胚)の搬出は、生体モデル開発チームが行います。
    寄託に際しては、(1)分与に際しては甲の合意を得ること、(2)論文発表に際し当該変異マウスの由来に関し第一報を引用しAcc. No.を記載すること、(3)発表論文を甲、乙に連絡することを分与条件とします。この際、共同開発依頼者(甲)は、分与依頼者との協議により、共同研究とする、研究目的を限定する、その他の条件を指定することができますし、分与を拒否することもできます。協議が成立しましたら、生体モデル開発チーム(乙)にご連絡下さい。その条件の下でマウスを分与するようRIKEN BRCに依頼します。

依頼方法

mutant.bdr(at)riken.jpに連絡し、下記の書類を案内に従って送付して下さい。
ご依頼は、”gRNAのデザインから”と、”Microinjectionから”の、2通りからお選び頂けます。
書類受領後2週間以内に、署名・捺印した共同開発同意書のPDFをメールで返送致します。 初めて申し込まれる研究室には、遺伝子改変マウス作製管理システム(以下;CDB Web)にログインするためのID番号と初期パスワードを発行します。
同意書を受領後、ID番号と初期パスワードでCDB Webにログインして下さい。
※以降の連絡事項は原則としてCDB Web内の掲示板にご記入下さい。

RIKEN BDRの微生物学的品質規格について、必ずご確認下さい。

必要書類

  1. マウス作製申込書
  2. 共同開発同意書(Genome Editing)
    同意書に遺伝子名を記入し、署名・捺印の上、PDFをメールでお送り下さい。
    同意書のご署名は所属長(=教授、またはこれに準じる方)に限ります。